いもち病と戦争と平和

いもち病と戦争と平和

2025年8月16日

6月に田植えを終え、順調に進んでいたお休み学園の田んぼですが、
7月の終わり頃、「ん?」っという違和感を感じて、
4日後頃に、稲熱(いもち)がブワーーーと広がりました。
いもち病というのは、稲につく糸状菌による病気で、
葉の部分を枯らしてしまう「葉いもち病」というのが広がってしまいました。
10年近く、田んぼ仕事をしていて、
葉いもちがついたことは過去に何度もありましたが、
こんなにひどく広がったのは、初めてのことで、
いろいろ調べてみましたが、「広がったら、成す術なく刈るしかない」みたいな情報ばかりで、
めっちゃめちゃショックでした。
田んぼのある、春日村の中でも、ここの集落は、低温多湿がバッチリ効いていて、
いもちにとって、とても過ごしやすい環境のようなのです。
なるほど!!!!
納得です。
水口付近の稲は、背も小さいし、いもちもひどいのです。

田んぼや畑の仕事と向き合うとき、
(種子から育てる場合は尚更)
その行為は、まるで子育てのようで、
種を蒔いて、芽が出て育っていく様は、本当に愛おしいです。
種を蒔くと、全く同じ環境にあるのに、
芽を出すタイミングや、成長の過程がバラバラで、本当に子どもたちと同じだな^^と、思うんです。

本当に、可愛くて、
しかも、今回はお休み学園の子どもたちと一緒に育てる田んぼだから、尚更、ショックが大きく
とにかく、対策を調べまくりました。

「土壌をアルカリ性にする事」が大切そうなので、
対処としては、灰を撒く。とか、苦土石灰を撒く。とか、そういうことを教えてもらいましたが、
どちらかというと、田んぼが始まる前にすること。が多くて、
罹ってしまってからの方法があまり書かれていませんでした。
農薬にしても同じで、罹らないための予防的な薬は、最初の段階で、
罹ってしまってからのこれという薬は、あまりない感じ。

そう。
薬に頼ることも考えたほどだったんです。
いろんな方に聞いたり、調べたりして、
自分たちらしい対策で、できそうな事は、
①酢水を撒く、竹酢液を撒くこと(土壌をアルカリ性にするため)
②灰を撒くこと(土壌をアルカリ性にするため)
③唐辛子エキスを撒くこと(病害、虫に有効)
④EM菌を撒くこと
でした。

噂のEM菌なんですが、いいことは間違い無いのでしょうが、
発酵菌マニアな私としては、
その土に本来いる菌に頑張って欲しいという思いが強いことと、
持続可能な農との向き合いをしたいと思っているので、
「自分で作れる」ということをなんか大切にしたいから、
EM菌を使ったことがなくて、
使うなら自分で作れる玄米酵母菌か、パラダイス酵母かな〜と、思い、
いろいろ悩んだ末に、
今回④番だけ、一番身近で、長い付き合いのパラダイス酵母に託してみました。

花咲か爺さんのように、灰を撒きながら、
ポニョのお父さんのように、農薬を散布するシュポシュポで酢水を撒きながら、
「がんばれがんばれ!!」言いながら、祈りながら、思ったことは。

いもちを、この田んぼの不良たちとしてみると
農薬で菌を死滅させることって、
不良を退学にすることと一緒で、排除することと同じだなと、思ったんです。
私は、人間同士の関わりで、
共存していく人間の優しさや強さを信じています。
不良たちを社会から追いやってしまうのではなくて、
いろんな想いを抱きながらも、共存していく術を見つけていきたいわけです。
自然の世界でも、同じで、共存できないわけがないと信じているので、
菌にも、それができるのではと思いました。
「こいつ嫌いやわ〜」っていう気持ちがあっても、
何も排除することはない。付かず離れずで付き合っていく方法を、見つけていきたいと、思いました。

約3週間、
モチベダダ下がりの中、ひたすら、①〜④を撒くという行為を繰り返していましたが、
見た目、的にはさらに広がった感はなく、
(それは、単に、8月に入り低温多湿のピークが過ぎたからかもしれませんが)
8月13日
早稲の満月餅とトッキーコシヒカリが出穂しました!!!!!!

北の国からの「水が出た!!!」バリに「穂が出たーーーー!!!」のテンションです!!!!!

ひどくなると、全滅もあるみたいな情報も入っていたから、
出穂してくれて、本当に嬉しい!!!!!
モチベが上がったことも、とても嬉しい!!!!!

農の世界は、まるで社会の縮図のようです。
動けない植物は尚更、自分だけでは、生きられないわけで、
雑草という存在はなく、
害虫という存在もなく、
調和を持ってそこにいる、ある存在です。
虫を頼り、雨や風を頼り、
周りの草木と共存している姿は、尊い姿です。
お米が取りたい、私たちにとって、いもちはショックな存在ですが、
おそらくこの土地にとって、きっと、いもちがしている功績を、
他の植物たちは、納得しているのでしょうね。
そう思うと、いもちもまた、厄介で優しいパンクスのように見えますね。

人間も、動くことこそ出来はしますが、
一人では生きていくことはできない存在で、
家族や地域や社会といった集団の関わりの中で、
抗ったり、はみ出したりしながら、
助け合いながら生きていくものです。
助け助けられ、繋いできた命は、植物同様、尊い存在です。

終戦80年を迎えて、
80年間、ずっと平和を守ってきた、その力は、かけがえのないものを失った悲しみの故だったはずです。
どんな理由であれ、
私は、80年間、日本が戦争してこなかったことを誇りに思います。
現状、見なきゃいけない矛盾もたくさんあるのはわかった上で、
それでも、80年間の平和万歳です!!!!
ただ現在の私たちの社会は、実に不穏できな臭さが蔓延しているように感じることも事実。
せっかく、こんなに社会が成長して、発展して、
世界中と繋がれる時代が来ても尚、
していることは争い合うことなのが、とても残念で、悔しいです。
「共存」という感覚が崩壊しつつあるように思います。
私が大好きなアドラー心理学の考えでは、
自分の言動に対して相手がそれを攻撃だと受け取ったら、相手は必ず防御に入る。
自分を守るために、何かしらの反撃という防御をするのが人間。
だからこそ、『精神性を高め、攻撃するのではなく、共同していくこと』を説いているのですが、
なんだか、この大好きな考え方から逆行しているように思え、
また、その逆行した価値観がマジョリティー化していることが、非常に恐ろしいです。
望むべきは、争いではなく、
子どもたちが、安心して巣立っていける平和な社会です。
そのために、一人一人ができることを、これからも考え続けていきたいと思います。

お盆と終戦が重なっているこの日に、
仲間と集い、歌って、輪になって踊って、
平和について、想いを巡らせ、語り合い、守り続けることを誓い合う、
尊い存在でありたいですね。

いもち病からの出穂に学び、
広島、長崎、終戦の日に、想いを馳せた今年の夏です。
あと3ヶ月、何事もなく収穫を迎えれますようにと祈るばかりですが、
出穂した矢先から、めざといカメムシたちの姿がチラホラ…。
害虫などいないと、再度、言い聞かせながら唐辛子エキスをくつくつ煮立てる
今日この頃です。